「YouTuber」という言葉も認知され、2013年より日本でもMCN(Multi Channel Network) という業態が始動した。2014年に米・ウォルトディズニーが「Maker Studios」というMCNを買収して話題になったので、耳にしたことがある方もいるかもしれないが、まだ一般では聞きなれない言葉である。
MCNとは個々のYouTubeチャンネルを束ねて管理し、チャンネルの成長や収益増加、著作権管理など動画制作活動におけるサポートサービスを行う事業体のことだが、今回はクリエイターのマネジメントから、ツールやサポートの提供等を一手に手掛ける日本最大のMCN、UUUM株式会社の取締役・高田順司氏にお話しを伺った。
―UUUMのサービスについて教えてください。
メディアではYouTuberを抱えるプロダクションとよく言われますが、私達の仕事は強いていえばYouTubeの複数のチャンネルを束ねてサードパーティ的に支援するMCN(Malti Channel Network)事業に一番近いと言えますね。その分野では、現在、YouTubeに認定されている日本のMCNの中では圧倒的なシェアを持っています。
もちろんクリエイターのマネジメントや、個人を束ねて管理するという意味ではプロダクション的な側面も持っていますが、私達は個人が動画を日々投稿することだけのサポートではなく、その人達の活動に基づいたコンテンツビジネス、例えば、ゲームの開発、グッズの製作や、イベント等、多面的にやっていますので、一言で「プロダクション」「MCN」とは括り難いところがありますね。
―高田さんのバックグラウンドを教えてください。
もともと音楽が大好きで、音楽に関わるメディア、とはいえ当時(2002年頃)はまだテレビ・新聞・雑誌が主流でしたが・・・そういうメディアに関わる仕事がしたかったので、大学時代から音楽雑誌の編集に携わっていました。5年位経過し、My SpaceやYouTubeが世に出てきて、自分の情報収集がインターネット経由にシフトする中で、SNSのmixiが音楽サービスを始めるということで、そこで音楽サービスの立ち上げに携わったり、有名人にmixiを使ってもらってマーケティング活用したり、ということを5年位やりました。
ちょうどその間にPCからガラケー、スマホへのシフトがあり、音楽のサービス・聴き方の変化、サブスクリプションのサービスの節目が来てるな、と感じているところにKDDIが台湾のKKBOXというサブスクリプションを日本展開するという話があり、そこで、KKBOXやLISMO等の音楽サービスの編成やコンテンツ企画等の仕事をしていました。
自分が常に雑誌、ソーシャルメディア、スマホと、その時代のメディアの節目を感じる場所に身を置き、情報の流れを見る中で、今後は「個人の力」が影響力を持っていく時代になっていくんだなということを感じていましたので、そういう点に共感し、1年半ほど前から現在のUUUMにジョインしました。
―現在の高田さんが担当している業務について教えてください。
UUUMを大きく3つに分けると「クリエイターのマネジメント部門」「クライアントと対峙するセールス部門」そして私が担当する「事業開発部門」となります。
「事業開発部門」はグッズ、イベント、クリエイターのIPを活用したゲーム製作、タイ・ベトナム等の海外にコンテンツをディストリビューションしたり、インバウンド需要に対する認知拡大として、例えば海外のMCNとネットワークを作って、各国のインフルエンサーに日本に来てもらい、彼らが自国でYouTubeやInstagramにあげてその情報を発信し、現地でのプロモーションをしてもらう。また、海外の企業が日本でインフルエンサーを使ってプロモーションするときのお手伝い、というような案件もあります。
もちろん事業開発、マーケティングもしますので、クリエイターに紐づく業務、以外のすべてを担当している感じですね。ですので、どんな事業開発をするか、という点においては特に決まりもないですし、「YouTuber」「動画」ということにもこだわりは全くなく、唯一私達がこだわっているのは「コンテンツ」という概念、そして「自分達がワクワクできるか」ということです。
―競合との差別化についてはどのようにお考えですか?
たとえば日本の市場においてはマーケティングという面ではその分野の競合が、プロダクションとしての面ではまた違った競合がいると思うのですが、UUUMの事業が複雑で多面的なので、どういう側面で切るかで競合の概念が変わってくるかとは思いますが、MCNという点でいうとないですかね。
―今後の海外への展望は?
インフルエンサーのマーケティングという点で行くと、現在8か国の会社とパートナーシップを組んでいますが、北米、東南アジア等でもインバウンド・アウトバウンド共にいろいろな需要があるので、そこに関わって行きたいということと、もう一つ中国はとても興味深く、YouTubeもInstagramも利用できない、インターネットのメディア環境が全く異なって独特な市場ですので、中国向けに「インフルエンサー・マーケティング」「動画コンテンツの正規提供」を考えています。
―今後どのような企業とコラボしていきたいですか?
これも、どの事業かによって変わってきますが、例えば企業とYouTubeチャンネルを運営したり、ゲームの開発等もいろいろしているので、特定の項目はないですね。クリエイターも多数抱えているので、企業の規模等はあまり関係ありません。
―影響を受けた人は誰ですか?
岡本太郎。彼の作品や本も好きなんですが、既成の概念や常識にとらわれず芸術という表現で自分を貫く姿勢が好きです。彼のわかりやすい名言で「危険だと言う道は、必ず自分の行きたい道なのだ。」というものがあるのですが、そこにとても共感する部分があります。
―一日のスケジュールを教えてください。
いろいろな事業の種類を見ているので、一時間ごとに違うミーティング・打ち合わせが入っていて、ランチを食べる暇もないこともあります(笑)
通常、私のチームは10:00くらいから19:00くらいまで勤務していますが、会食や打ち合わせも入るので、時期によっても、プロジェクトによっても全然変わってきますね。
―お気に入りのアプリはなんですか?
やはり音楽が好きなので” TIDAL”と”Spotify”ですね。好きなジャンルは・・・クラッシックのオケ物以外は大体聞きます。現在は処分してしまいましたが7~8000枚くらいレコード・CD等を持っていました。もともとは洋楽ロックが好きで、雑誌の編集をしていたのも洋楽ページです。
―お気に入りのハングアウトスポットはありますか?
ずーっと考えてるんですけど・・・最近とにかく移動が多いので「タクシーの中」です。スマホを使って、slackやメール等のやりとりをする中で、タクシーの中は本当に仕事が捗るんです。帰宅が遅くなってしまうので、なかなか家族と食事をする時間もないのが現状です。
現在UUUMに所属するクリエイターは約3,500名以上、YouTubeの月間再生回数は20億回を超えるなど、圧倒的なシェアを誇るUUUM。もはや名実ともに国内最大手となった彼らは、そこに留まることなく、いわゆる”MCN”ではなく「コンテンツ」「クリエイター」のプロフェッショナル集団として常に時代の流れを先導する立場になるであろう。
そして自ら現場に立ち、彼らを引っ張っていく高田氏の持前の先見の明は今後もUUUMのガイディングライトとなるに違いない。